私の修行時代2015.11.30
私は1998年~2010年までの12年間、東京都町田市の茶位幸信ギター・ヴァイオリン工房でギター製作の仕事に携わる機会を得ました。
茶位ギターでの仕事で一番特徴的なのはスピードを要求されるところ。工房とはいえ、茶位ギターはかなり大型機械を導入した工場と工房の間のようなところ。創業何十年の間に何万本というギターを作ってきた老舗工房です。おのずと私が関わったギターも何千本単位でしょう。修行という面からみると、そのギターの数の多さが大変私の身になったのだと思います。
ネックをナイフで削るのも10本削るより100本、100本削るより1000本と、数が増えれば増えるほど技術が体に染み込んできます。楽器に装飾を施すことをあまり好まない親方でしたので、簡素なデザインでシンプルな鳴る楽器を1本でも数多く作るという考えのもと、多くのギターに接することができました。
また作る楽器の多さでは定評のある茶位ギターですので、通常のプライムギターを中心にバスギターやコンバスギター、アルトギターやソプラノギター等の合奏ギター、又はアコースティックギターやエレキギター、フルアコからウクレレまでととても幅広く経験を積むことができました。ヴァイオリンはさすがにできませんでしたが。
茶位ギター出身者で今でも活躍している製作家が何人もいらっしゃいます。何年いても一つの工程しか教えてもらえず、なかなか独立が難しい工房の話も昔聞きましたが、茶位ギターは何年もいればいろんな工程を任せてもらえ、また楽器の種類の多く数も作るので自然と技術が身に付くのでしょう。
だからこそこれだけ多くの方々が独立して活躍されているのだと思います。